私は天使なんかじゃない








ハンガー





  上手く行っているからといって油断してはいけない。
  次の展開の影に失敗が潜んでいる可能性があるからだ。
  油断大敵。





  ロボット工場は陥落。
  徹底的に破壊され尽くした。工場で働いていたと思われる作業者エイリアン、警備のエイリアン、そして完成&未完成ロボット群は壊滅。
  決定的な一撃を叩き込んだ。
  人類連合の反逆の狼煙が上がったのだっ!
  ……。
  ……ま、まあ、私達は何もしてませんけどね。私達、それは私、ソマー、エンジェルの3人を指す。
  意気揚々とロボット工場破壊に出向いたものの何もしてない。というか私はここでもエイリアンを1人も倒せずに展開終了。
  壊滅させたのはフィーさんだ(尊敬の念を込めて、さん付け決定)。
  あの人の特殊能力は私にも身に付けられそうもないけど発想は習得したいと思ってる。
  頑張らないとね。
  ともかく。
  ともかくロボット工場、陥落。
  まずは私達の1勝だ。



  「何かあったみたいだね」
  ロボット工場を破壊した私達はベースキャンプとして陣取っているエンジンコアに舞い戻った。
  フィーさんは同道せず。
  どこに行ったかは不明。
  彼女は単身で稼動しているテレポーターでどっかに向った。一匹狼の性格のようだ。まあ、あの人ならエイリアンがどれだけいようと問題ないだろうけど。
  「エイリアン」
  私は呟く。
  エンジンコアにエイリアンがいた。
  そのエイリアンは怯えたように床に這い蹲っている。
  武器の類は持っていない。
  そりゃそうよね。
  何しろ武器を手にしたエリオット、ポールソン、Mrクラブがエイリアンを包囲している。
  死んだエイリアンはそこら中に累々と転がっているし他の仲間達も銃火器を手にして警戒しているところを見るとエンジンコアに攻撃を仕掛けてきたらしい。
  もしくは貨物倉庫から物資強奪した際に付いて来たのか。
  いずれにしてもここで戦闘があったのは確かだ。
  エリオット・ターコリエンは貨物倉庫で手に入れてきたのであろうアサルトライフルをエイリアンに向けながらポールソン、Mrクラブに提案する。
  「な、なあ、こいつを捕虜にしようっ!」
  「捕虜だと?」
  「そ、そうだ、ポールソン。このエイリアンを捕虜にして、エイリアンどもと交渉するんだっ! Mrクラブ、賛成だろ?」
  「おいおい未来の軍人さん、あんたこいつらの言葉は分かるのか?」
  「そ、それは……そ、そう、ジェスチャーとかっ!」
  はあ。
  ポールソンとMrクラブは顔を見合わせて露骨に溜息。それから同時に銃弾をエイリアンに叩き込む。
  ポールソンはリボルバーの小型拳銃で。
  そしてMrクラブはトミーガンだ。
  ニューヨークの暗黒時代のマフィアが使用した銃火器だ。貨物倉庫で見つけたんだろうけど似合い過ぎの武器のチョイスだ。
  まあ、元々彼はマフィアなんだけどさ。
  エイリアンは蜂の巣。
  ポールソンはにやりと笑った。
  「これで交渉成立だ。ギャングも異議ないだろ?」
  「俺はギャングじゃねぇ、マフィアだ。覚えておいてくれよ、カウボーイ」
  ふぅん。
  ポールソンとMrクラブは結構気が合っているらしい。
  他の仲間、アジア系の民間医のDrサムソンやリベットシティのセキュリティのローズは緊張した面持ちで周囲を警戒していた。
  サムライマン?
  正座してます。日本人の考える事はよく分からん。
  それにしても早くサムライソード返してあげたらいいのにな、フィーさん。結局持って行ってしまった。まあ、私も彼女とのファンタジーな話でそのことを完全に忘れてたわけなんだけど。
  刀があればサムライマンも戦力になる。
  言葉は通じなくとも敵は共通しているわけだから協力し合える。
  私はとっとと地球に帰ってパパを探したい。
  「あっ。お帰りなさいっ!」
  サリーが私達に気付く。
  「さっきビリビリって船が揺れて、それから照明が付いたり消えたりした。ジェネレーターを破壊したんだね。すごぉいっ!」
  「まあね」
  私は何もしてなかったけど。
  ともかく一つ目のジェネレーターの破壊は成功した。
  まずまずのスタートだ。
  私は広大なエンジンコアに形成された独特な一画を見て苦笑した。
  バリケードが築かれ、様々な銃火器が無造作に置かれている。
  大量の弾丸もある。
  おお。あれってミニガン?
  材質が何かは分からないけど、緑色の四角いコンテナの上にミニガンが備え付けてあった。
  敵をここで迎え撃つのかな?
  バリケードの向こう側にはベッド、工具、食料品や飲料水がある。お酒もある。
  サリーが貨物倉庫から持ってきたのか、ヌイグルミやバターカップ(馬のミニチュアの置物)がある。
  全てを総合すると一ヶ月の激戦が出来るだけの物資だ。
  苦笑しながらサリーに聞く。
  「貨物倉庫から全部持ってきたの?」
  「ううん。まだまだたくさんあったよ」
  「へー」
  どんだけ地球からかっぱらってきたんだ、宇宙人達は。
  まあ、都合が良い。
  物資の欠乏という展開にはならないで済む。
  充分にエイリアン達に対抗出来る。
  何しろエンジンコアに攻めてきたエイリアン達はエリオット達に撃退された、それはつまり実弾系の武器でエイリアンを殺せるという証明だ。
  地球の武器で充分に対抗出来るという証明になった。
  結構気分的に楽かな。
  だってエイリアンは未知のハイテク兵器を持っているものの肉体的にはかなり脆弱だ。
  人間並みか、いえ、ソマーに殴り殺されるぐらいなんだからおそらく人間よりも弱いのだろう。ウニョウニョしたバリアを張る奴もいるけど、基本的にエイリアンは人間よりもひ弱だと認識できた。
  私達にしてみても嬉しい証明だと思う。
  さて。
  「ご飯でも食べようかな」
  考えてみればボルト101脱出してからヌカコーラしか飲んでない。
  その後宇宙人に拉致られて『どこまでも赤毛よね☆』とソマーに全裸見られて言われたりエイリアンにショックバトンでグリグリされてビクンビクン状態だったりとロクでもない展開が続いていた。
  リラックスしてないわけです、私。
  ご飯ぐらいゆっくりと食べよう。
  それに食べながら色々と皆と話したいし人となりも知りたい。
  まあ、一応大体はざっくりと分かったけどさ。


  《ソマー》
  キャピタル・ウェイストランド出身。20代後半ぐらい?
  過去を謎にしたがる黒人女性。おそらく年代は私と一緒ぐらいだと思う。機械の解体や修理に長けているという手先器用人。
  武器はコンバットショットガン。

  《エリオット・ターコリエン》
  アンカレッジ戦に参加した衛生兵。金髪の白人。多分30代前半ぐらい。基本的に小心者(笑)。
  武器はアサルトライフル。

  《ポールソン》
  西部開拓時代のカウボーイ。年齢は多分40代ぐらい。口汚いけど腕は立つ、というチョイ悪親父。
  武器はリボルバーの小型拳銃。

  《サムライマン》
  年齢不詳。言語の不一致。甲冑を着込んでいるから、ざっくりとだけど戦国時代出身、だと思う。する事ないので正座ばっかりしてる。
  武器はおそらくフィーさんが使ってるサムライソード。
  早く返してあげて欲しい。
  そしたら戦力増えるわけだし。

  《Mrクラブ》
  禁酒法時代のマフィア。30代後半。妙にポールソンと気が合う模様。
  彼より後の年代に生まれた人間同盟の者に対して『未来の〜』という呼び方をする。(例。エリオットの場合、未来の軍人。ソマーの場合、未来の女傑など)
  武器は暗黒時代のマフィア御用達のトミーガン。

  《エンジェル》
  BOSという組織でスクライドという役職を持つ赤いローブの女性。20代後半の白人。知識人であって戦闘向きではない。
  宇宙船の技術に興味津々。
  戦闘は不得手ではあるものの武器は10mmサブマシンガンを携帯。

  《Drサムソン》
  アジア系の民間医。初老の男性。
  基本的に人当たりの良い微笑を常に浮かべているものの仲間とは一歩離れた位置で物事を傍観している。
  武器は中国軍ピストル。

  《ローズ》
  リベットシティのセキュリティ隊に属していた白人女性。20代前半。
  ピンカートン追放を指示した人物……らしい。
  ピンカートンって誰?
  武器はアサルトライフル。

  《サリー》
  人間同盟のマスコット的な存在の少女。しかし実際は誰よりも宇宙船&エイリアンに精通しているスーパー少女。
  妹を探しているらしい。
  基本的に実際に戦闘するのではなく後方支援を担当している。
  妹を探しているらしい。

  《フィッツガルド・エメラルダ》
  愛称フィー。よくは分からないけど魔法を使う無敵の女性。……魔法は反則だろー。
  孤高の性格なのか現在1人で行動中でこの場にもいない。はっきり言って彼女1人でエイリアンは何とかなるかもしれない。


  仲間はこんな感じ、かな。
  私は知る限りの情報を頭で整理した。
  ソマーもエンジェルも他の仲間達が貨物倉庫から持ってきた武器の中からお気に入りを選びさっきまで装備していた武器と交換した。
  とりあえず形の上でエイリアンに反旗を翻す準備が出来たってわけだ。
  私の武器?
  アサルトライフル、腰にはベレッタを差し込む。弾丸はふんだんに持った。一応グレネードも1つ携帯。
  防御に関してはボルト101のジャンプスーツのまま。
  コンバットアーマーもあったけどサイズが合わなくて私は着れなかった。防御的には心許ないけど……まあ、仕方ない。
  それはともかく。
  「ご飯ご飯」
  お腹が空いた、というか小腹が空いたって感じだ。
  随分と不思議な感覚だと思う。
  活躍こそしていないもののあまりお腹が空いていない、そしてPIPBOY3000を確認するとそんなに時間が経っていない。時間の流れ方がおかしいのか、この船の中。
  それともPIPBOYの故障か。
  まあいいや。
  とりあえず何か食べよう。
  「待て、保安官」
  「ん?」
  ポールソンが待ったを掛ける。
  何だろ。
  「あの小さな連中を始末しに行くぞ」
  「はっ?」
  「俺の家族を殺したあのチビスケどもが生存しているのは俺としては許せん。狩りに行くぞ」
  「あの、私はお腹が……」
  「そいつはいいね」
  ソマーが口を挟む。
  「ロボット工場は陥落した。ここで……そうだね、ハンガー辺りを先に潰しておけば後がやり易い。奇襲した方がいいと思うね、少数でね」
  余計な事をーっ!
  その言葉を聞いてニヤリとMrクラブは笑った。
  「俺も加わろうじゃないか」
  「ねーねー。今度は私も一緒に遊びに行くー☆」
  ……。
  ……どうやら私も加わらなければ行けないらしいですね。
  ハンガー襲撃にはポールソン、Mrクラブ、サリー……ってサリー?
  まあ、スーパー少女になわけだから問題はないだろう。万が一の際には一番逃走成功率が高いだろうしね。
  宇宙船に一番精通してるわけだし。
  しかし私も参加は決定事項?
  何か食べたかったです。





  というわけで。
  私達はハンガー襲撃を敢行。私、ポールソン、Mrクラブ、サリーが参加者。
  その他の面々はエンジンコアの拠点を防衛、そして貨物倉庫から物資をせっせと運んでいる。……そっちの方が楽そうだなぁ。
  ただ何気にハンガーも楽だったりする。
  「うーん」
  予想外だ。
  結構拍子抜けだったりする。
  完全に手薄だからだ。
  いやいや。
  完全に無人だったりする。
  だだっ広いだけの空間が広がっていた。天井もやたらと高い。広さだけなら1000人ぐらい収容出来るんじゃないかな。
  それだけ広いのに敵はいない。
  何故に?
  ポールソンとMrクラブも疑問を感じているらしくそれを口にしている。
  「なんだなんだ? あのチビどもがいないじゃないか。復讐のし甲斐がないぜ、これじゃあな」
  「出払ってるんじゃないのか、カウボーイ」
  「かもしれん」
  「だが確かに暇だぜ」
  私達はやたらと広いだけの空間を歩く。
  この空間にあるのは使い道の分からない資材だけだ。
  ハンガーなわけだから小型宇宙船がないのはおかしい。
  どこにある?
  まあ別にあろうがなかろうがどうでもいいけどさ。
  広大な空間の果てに扉がある。あそこが多分ジェネレーターのある部屋に通じているのだろう。
  敵がいない。
  だけどいつまでもいないとは限らない。
  早足で進む。
  敵がいないのも気になるけどこの空間の中央を囲む形で6本の柱が立っている。
  あれは何だろ?
  意味の分からんものには近付かない方が得策かな。
  私は歩きながらサリーに聞く。
  「あの柱は何?」
  「振動するんだよ、あれ」
  「振動?」
  「近寄らない方がいいよ。お陀仏するから」
  「はっ?」
  意味分からん。ともかく近付かない方がいいのは確からしい。大きく迂回する私達。
  さて、質問を変えよう。
  「小型宇宙船は?」
  「んー、ないよ」
  「ない?」
  「前にエイリアン達が映像を検証してるのを見た事があるんだ。地球に飛来したりしてるみたいだけど、大体は墜落するみたいだね」
  「何故?」
  「知らない。でも頻繁に墜落してるから小型宇宙船はないんだよ。もっともこの母船でも人間誘拐できるから関係ないみたいだけどね」
  「ふぅん」
  墜落する、か。
  つまりほとんどの宇宙船が墜落して大破、今はハンガーには一隻もないって事?
  ……。
  ……うーん。もしかしたら放射能が影響しているのかな?
  全面核戦争の関係で地球には放射能濃度が濃い。小型宇宙船は放射能の関係で墜落するのかも。
  まあ、憶測だけどさ。
  ともかく。
  ともかく私達は敵が来ない内に広い空間を通り過ぎて扉を開いて中に入る。
  これだけ広いのに敵がいなかったのは……多分エンジンコアを襲撃したのがここにいた連中だったから、かもしれない。
  敵がいないのは楽でいいわけだから理由は何でもいいんだけどさ。
  扉を抜けると狭い通路、急な階段に遭遇する。
  一本道だ。
  私達は駆け上る。
  階段を駆け上がると様々な計器や機械のある部屋だった。スクリーンモニターが無数にあり、その前にはエイリアン達が座っていた。
  コントロールルームのようだ。
  エイリアンの数は5体。
  そう多くない。
  まあ、小型宇宙船の数がほどんどないわけだしここに人数を割く必要はないわけだ。
  実に都合がいい。
  敵の数が少ないのはこちらとしてもやり易い。
  「サリー」
  「なぁに?」
  「さすがに小型宇宙船の操縦は出来ないわよね?」
  「やったことないなぁ」
  小型宇宙船があればそれにみんなで乗って帰るって手もあったんだけどな。
  もっとも、全員が全員帰りたいわけではないのかもしれない。
  ターコリエンとか。
  それにこんな物騒な連中が自分たちの頭の上で活動しているのは生理的に気持ち悪いものだ、知ってしまった以上は何とかしないとな。
  「保安官、あの程度の数では拍子抜けだ。もっと連中を呼んできてくれ」
  「無茶言わないでよ、ポールソン」
  「バーベキューソースでも塗ってやれよ、ははは」
  「やれやれ」
  Mr.クラブはなかなか言うことが下品だな。
  私たちの声に連中が反応した、そりゃそうだ、こんなにワイワイ話してたら気付くだろう。
  連中はこちらを見て腰を浮かす。
  しかしそれが最後の動作だった。
  「チビども、復讐の時間だっ!」
  「過去からのお届けものだ、鉛弾をお届けするぜっ!」
  銃撃音。
  ポールソンのリボルバーとMrクラブのトミーガンが火を吹く。大量の弾丸がエイリアン達を蜂の巣にして永遠の眠りに付かせた。
  わずか数秒だ。
  「くくく」
  おーおー。ポールソン、悪い顔してるなぁ。
  家族を殺されたわけだから気持ちは分かるけど。
  パァン。
  ポールソンとMrクラブはハイタッチ。
  「良い仕事だったぜ、カウボーイ。西部劇仕込みか?」
  「さあな」
  「愛想のないところが気に入ったぜ、カウボーイ。とっととエンジンコアとかいう場所に戻って酒でも飲もうぜ」
  「ああ」
  仲のよろしい事で。
  もちろん仲間なんだから仲良くした方が良い。その方が生き残れる可能性が高くなるからだ。連携が強まる、それは大切な事だ。
  グイ。サリーが私の袖を引っ張る。
  「何?」
  「ミスティまた一匹も倒せなかったね。ビバ役立たず☆」
  「……」
  「冗談☆」
  「あははははそれ笑える(棒読み)」
  サリー、結構きつい事をさらっと言います。
  子供ゆえの残酷なまでの無邪気ってやつですか?
  はぁ。だけど確かに役立たずかも。
  うー。
  ともかくエイリアンは一掃した。
  私自身は何もしてないけど結構ちょろい相手なのかもしれない。というか危機管理出来てないだろ、完全にね。
  ロボット工場は陥落した。
  エンジンコアの奪還は失敗した。
  この2つの状況が起きたのにまるで対処されていない、つまり防備は甘過ぎる。たかがモルモットと油断しているのか、それとも危機管理という概念が
  エイリアンにはないのか、もしくは本当にエイリアンの個体の絶対数が少ないのか。
  うーん。
  もしかしたら全部が該当しているのかもしれない。
  まあいい。
  「よっと」
  ドサ。
  椅子に突っ伏して死んでいるエイリアンの死体を床に転がす。
  モニターを覗き込む。
  「……」
  これはハンガー内の映像よね?
  あの妙な棒も映ってるし。
  ……。
  ……前言撤回。
  敵さんは大規模動員して現在このコントロールルーム目指して進軍中。無人兵器のドローンとかいうメカも映ってる。
  数は、えーっと……これじゃあ把握出来ない。
  画像が近影過ぎる。
  「どいて」
  サリーがそう言って何かのスイッチを押し、キーボードらしきものを叩く。
  画像が敵軍の全体像をとらえる。
  ハンガー内が頭上から室内の全てを映す。ワラワラとコントロールルームの扉目指して進軍中。
  数にして50。
  まずい。
  実にまずいぞ、これは。
  何で出払ってたかは知らないけどジェネレーター潰すまで外出しておいてくれよ、留守番は私らがしておくからさ。
  「保安官、一気に全部蹴散らすチャンスが来たぞ」
  「いやいやいやっ! さすがに対処の方法がないわよ」
  「FBIとやりあった時の事を思い出すぜ。未来のお嬢さん、準備はいいかっ!」
  「よくないっ!」
  ポールソン達はやる気満々。
  あの人数相手に戦う気全開か。
  無謀だと思うものの、フィーさんの言葉を思い出す。
  戦闘に勝つ為には心を動かされない事。ここで無用にオロオロとすれば2人の気勢を殺ぐ事にもなる。私は静かに微笑した。内心では怖いけど微笑する。
  戦おう。
  戦って女になるぞーっ!
  アサルトライフルを構える。
  あと数分でここに敵が雪崩れ込んでくるはずだ。
  私達は扉に銃火器の照準を固定する。入り口が1つなのは助かる。連中が入り込めるのはあそこだけだ。地の利はこっちにある。それを生かせば寡兵でもある程度は何とかなる。可能な限り
  戦って数を減らそう。その後脱出して仲間たちのところまで引っ張って行って一網打尽大作戦だ。
  迎え撃ってやるっ!
  「私に任せて☆」
  「サリー?」
  ポチ。
  彼女はモニターと向かい合い、何かのボタンを押した。
  その時、モニターの中で柱の1つが振動した。
  周囲にいたエイリアン達を吹き飛ばす。
  ああ。そういえばあの柱に近付くと死ぬとか言ってたっけ。
  ここで操作するらしい。
  ポチ。ポチ。ポチ。
  テンポよくボタンを押すサリー。押すたびに6本ある柱の1つが作動、周囲の敵を薙ぎ倒す。
  「ビートマニアは得意なんだから☆」
  「はっ?」
  よくは分からないけどリズミカルに押すのがコツらしい。
  確かに。
  確かに一度柱を作動させると次の柱を振動させるまでに数秒のラグがある。的確に敵の密集している柱を起動、確実に敵を屠る。リズム感が必要だろう。
  ポールソンが呟いた。
  「すごいな。あの柱は雷で出来ているのか?」
  エイリアン達は成す術もなく壊滅に追い込まれていく。
  そして私は気付く。
  テクノロジーさえ取り上げたらエイリアン達はまったく成す術もないのだ。
  敵としては弱い部類だと思う。
  ボルト101のセキュリティより弱い。
  もちろんテクノロジーを取り上げるまでが厄介なんだけど、取り上げてしまえば人間よりも貧弱だ。
  勝てるかもしれない。
  戦いようによってはエイリアン達に勝てるかもしれない。
  それにしてもサリーはエイリアンの機器の使い方を熟知しているようだ。今まで覗き見してたらしいから覚えたのか、それともそのように改造されている?
  まあ、いい。
  サリーのビーマニの腕でエイリアンは壊滅。
  ハンガー制圧完了っ!
  これで人間同盟の二勝目だ。
  「ミスティ、終わったよ」
  「お疲れさま、お姫様」
  今回のエースはぶっちぎりで彼女だし、総合得点も彼女だ。
  やばいな。
  宇宙船降りた後、私はキャピタルでやっていけるのか?
  不安ですな。
  おおぅ。